尿失禁 その2

治療法

腹圧性尿失禁

このタイプは主に手術療法薬物治療となってきます。

軽度の方であれば内服薬である程度コントロールは可能かと思いますが、それ以上であると根本的な治療となると手術療法になります。

尿漏れの重症度についてはパッドテストというものがあり、1時間パッドテスト24時間パッドテストの2種類あります。その時間で漏れる量により軽度、中等度、重度と分けられます。

1時間パッドテストは、500mlの水分摂取のあと、30分歩行してもらい、椅子に座り、立ち上がりの動作を10回、強くせき込む動作を10回、大きく足踏み1分間、腰をかがめて床のものを拾う運動5回、流水で手を洗う動作1分行ったのち使用したパッドの使用前後の重量差を評価するというものです。

ただ、足腰がわるい、上記のような運動負荷に耐えられないような特に高齢者などは24時間パッドテスト(24時間自宅で特別な負荷をかけずに過ごしてもらいそのパッドの重量差を評価する手法)を行うのがベターかと思います。

これらは自宅でご自身でもできるかとおもうので参考までに重症度の失禁量を記載しておきます。

1時間パッドテスト:正常2g以下、軽度2.1g~5.0g、中等度5.1g~10g、高度10.1~50.0g、極めて高度50.1g~、 24時間パッドテスト:軽度20g未満、中等度21g~74g、高度75g以上 となっています。

手術適応がある尿失禁のタイプはこの腹圧性尿失禁のみです(ほかのタイプは手術では治せません)。

手術療法

一般的に腹圧性尿失禁に対しTVT手術、TOT手術という術式が行われます。

いずれの術式もその侵襲性、成功率、再発率の低さから各施設で腹圧性尿失禁に対してよく行われています。

どちらの術式も手術時間はおよそ30分~50分程度で終了します。術後は一般的には翌日にはおしっこの管がとれて、点滴の管もとれ、食事も再開しますのでその翌日には排尿状態が問題なければ(自排尿が問題なくできれば)退院可能かと思います。

退院後の外来通院フォローも退院後2週間、2か月、6か月、1年、(施設によっては2年目まで)といった感じでそれほど苦にならない程度の通院頻度だと思います。

自分のところでは1年目でフォロー終了していました。

ただこの手術療法に関して注意点というか、正しく理解していただきたい点があります。この尿失禁防止術TVT,TOT手術というのは今あるひどい尿もれを全くゼロにする手術ではないということです。

10ある尿もれを1、2程度に軽減するような手術ということです。


尿取りパッドを今まで一日5枚6枚と交換していたのが一日1枚程度で済むようになったといったイメージです。

とはいっても

術後尿もれが全くなくなった、パッドは必要なくなったという方はたくさんいらっしゃいます。むしろそのような患者さんの方がほとんどです。


ただ「尿もれはかなり軽減し楽になるけれど10人中10人尿もれがピタッとゼロ」ということにはならないかなぁという印象です。

やはり一部の人にわずかに漏れがのこることがある方もいらっしゃいます。しかし、その方もパッドがしめる程度とかです。なのでお話を聞くと「気にならない漏れです」とおっしゃいます。

中には手術が怖くて希望されない方もいらっしゃいます。そのような方には内服薬(商品名;スピロペント)で経過をみていくことになります。ときには骨盤底筋体操を併用してもらうこともあります。

薬物療法

中には手術が怖くて希望されない方もいらっしゃいます。そのような方には内服薬(商品名;スピロペント)で経過をみていくことになります。

ときには骨盤底筋体操を併用してもらうこともあります。

レーザー治療高強度テスラ磁器刺激療法

 これは現在保険適応外の治療法です。1つはレーザー治療で、基本的に無麻酔で経腟的にlaserを照射して組織を引き締めたり血管新生を促し、また、コラーゲン産生効果を発揮したりして尿道のしまりをよくし漏れを治そうというものです。


 もう1つは高強度テスラ磁気刺激(HITS)療法といわれるもので、高強度の磁気を骨盤底にある筋肉や神経にあてて骨盤底筋を強化したり、膀胱や尿道の働きを司る神経を良好な状態に調整する治療法です。この治療法の良いところは、患者さんは服を着たまま磁気を発する椅子に座るだけで、あとは何もする必要がないことです。

治療時間は1回30分程度ですから座っている間は読書するとかスマートフォンなど見ているなどしていればよいのです。これはあくまで個人的な意見と印象ですが、これらlaserと磁気療法は手術はしたくない、内服薬はあまり効果がない、でも漏れは治したいなんて方にはいいのではないかと個人的には考えています。

からだに優しい、低侵襲、入院の必要性がない、無麻酔(麻酔があるとしても粘膜表面に塗る塗布麻酔くらい:塗り薬みたいなもの)といったように非常に危険性の低い手技なのではないかと思います。

一般のクリニックでも可能な治療法です。

ただ、デメリットとしては先ほども触れたように保険診療ではないので、いわゆる自由診療になります。つまり、全額自己負担となります。

なので、お値段は各クリニックなどこれら機器を導入して治療施設によって変わってきます。

あくまで参考程度ですが、laser治療は1回~3回くらい反復しておこない、その後、半年ごと、あるいは1年ごとに状態維持のための通院治療が必要になることもあります。

1回の治療で効果が永久に続くわけではありません。やり方も各施設によって差があるかと思いますので。1回あたり10万円前後程度のようです。

正確性に欠けるので料金はその病院に必ず問い合わせして確認してください。高強度の磁気刺激の治療は大体8回で1セットの治療を1~2セット(週1、2回)になるかとおもわれます。

1セット8万~10万円前後でしょうか。お金の点が難点ですがそれを除けば効果が期待できる治療法だと個人的には考えます。

そして、もし自分もこの腹圧性尿失禁で悩んでいて治療を考えたときに、トライするとしたらまずレーザー治療や高強度テスラ磁器刺激療法を受けてみる価値はあるかなと考えます。

お金は少々お高めですが、入院して手術受けてかかるお金や、あるいは内服で経過見る際にずっと病院外来に通院するお金や時間など考えたらどのみちお金は結構かかります。デメリットを押しのけ、あり余るメリットはあるのではないかと個人的な意見ですがそう思います。

切迫性尿失禁

急に尿意をもよおして尿意をこらえるのが難しく(尿意切迫感)漏れてしまうこのタイプは内服薬でコントロールしていくことになります。

原因は膀胱自体の過敏性による排尿筋過活動といわれる状態からくるもの、神経的なものからくるもの(神経因性膀胱)などがありますが、いずれにせよ内服薬を何種類か併用して失禁をコントロールすることになります。

このタイプは尿意切迫感も頻回に生じ頻尿傾向となることから、あまりにも頻尿、尿失禁が高度で本人が不眠などで疲弊する場合にはおしっこの管を留置する場合もあります。

また、手術といわれるほどの侵襲性はなく、外来で治療できるレベルのものなのですが、ボトックス膀胱内注入療法というものが2019年12月から保険適用となっています。

ボトックス膀胱内注入療法

内服薬でのコントロールが難しい切迫性尿失禁や尿意切迫感頻回、そしてそれに伴う頻尿、例えば15分から30分おきにトイレに行ってはまたトイレにかけこむといった状況で、本人にとってみれば苦痛以外の何物でもなく、日常生活が成り立たない状態かと思われます。

内服薬を一定期間服用しても症状改善ないような方にこのボツリヌス膀胱内注入療法は良い治療法ではないかと思われます。

手技的にはそれ程煩雑ではなく、手技時間も15分程度で終わります。全身麻酔など必要なく、一般外来、つまりクリニックでも施行されている手技で、日帰り手術となっています。

内容は膀胱のカメラを使用してすごく細い針で膀胱粘膜に針を刺して粘膜下にボトックス(A型ボツリヌス毒素製剤)を所定の箇所に決められた容量だけ注入するというものです。

効果は2,3日後から現れ始めます。ただし、効果は永久的ではなく4~8か月間といわれています。

この治療法の良い点として、症状が再燃した場合は何度でも同じ治療ができるということです。

その一方で繰り返すことにより抗体ができ、次第に効果が減弱するリスクがあるということです。

なので再投与するにしても間隔を12週間はあけるようにと言われています。

とはいえ、この治療法は自分が実際に経験した患者さんのお話ですが、この治療を受けたのち日常生活がよりよい生活をおくれるようになったとお話しされていました。いまはだいぶこの治療法も浸透してきていると思われます。

この治療法はまだあまりよく知られていないかもしれません。もっと知ってもらえればいいなと思います。

全身麻酔などは不要、日帰り手術(病院によっては1泊2日など入院かもしれません。また、手術というほどのものでもないと思います。処置検査程度かと思われます。)、効果は個人差があるかと思いますが受ける価値は十分にあると思いますし、再燃したらまた同じ治療ができるというメリットもあります。

大きな合併症も基本的にはありません。なので良い治療法だと自分は思います。

ぜひ近くの泌尿器科に相談にいってみてはいかがでしょうか?

混合性尿失禁

これは腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が混在したものになります。

なので状況によっては腹圧性尿失禁に対し手術療法を行うこともあります。

切迫性尿失禁の重症度にもよるので慎重に検討しなければならないでしょう。つまり腹圧性尿失禁の尿もれを手術で治しても切迫性尿失禁がコントロール不良でそれなりの尿もれ量が残ってしまうのであれば患者さんにとって日常生活おくるうえでぜんぜん快適にならないはずです。

むしろ手術を受けるリスクを負うばかりであまりメリットが感じられません。なのでこのあたりは色々と泌尿器科的精査をしたうえで治療方針は決定されなければならないでしょう。

機能性尿失禁・溢流性尿失禁

機能性尿失禁に関してはおもに足腰がわるく歩行速度が遅いことによりトイレに間に合わないことが尿漏れの原因なので、いつもいるところの近くにポータブルトイレを置くとか、おむつをあてておくとかの対処法となります。創意工夫ってことですね。


溢流性尿失禁は原因はともあれ尿の排出困難があり膀胱に常に尿がパンパンでしかたなく尿が溢れ出てきて漏れ出している状態なのでこのタイプは応急処置的におしっこの管を留置することになります。

それと並行して尿の排出困難にいたった原因を検索し治療していくことになります。

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