こんにちは、管理人のYUKIです。
前回は、おねしょ(夜尿症)が起こる原因や、子どもの心身への影響についてお話ししました。
あわせて読みたい|夜尿症の原因を知りたい方へ
👉 小学生のおねしょはいつまで?夜尿症の原因と子どもへの影響を泌尿器科専門医が解説
夜尿症の原因や、子どもの成長・生活への影響について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
今回はその続きとして、
「では、夜尿症はどうやって治していくの?」
というお話です。
夜尿症というと、
「すぐに薬を飲ませるの?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、夜尿症の治療は、いきなり薬から始めるわけではありません。
まず大切なのが、
生活習慣や排尿習慣を整えること
です。[1,2]
今回は、夜尿症治療の基本となる生活指導や、家庭でできる対策についてお話しします。
夜尿症の治療は何歳から?
夜尿症は、年齢が低いうちは自然に改善する可能性もあります。
そのため、年齢だけで一律に治療を始めるわけではありません。
国際小児禁制学会(ICCS)の標準化文書では、積極的な治療はおおむね6歳頃から検討できるとされています。[2]
ただし、
- 本人がおねしょをとても気にしている
- 小学校の宿泊行事が近い
- 夜尿の頻度が多い
- 家族の負担が大きい
など、本人や家族がどの程度困っているかによっても治療開始のタイミングは変わります。
大切なのは、
「何歳になったら絶対治療する」ではなく、本人と家族の状況に合わせて考えること
です。
まず便秘がないか確認しましょう
夜尿症のお子さんを診る際に、とても重要なのが便秘です。
「おねしょなのに、なぜ便秘?」
と思うかもしれません。
しかし、膀胱と直腸は骨盤の中で非常に近い場所にあります。
便が直腸にたまった状態が続くと、膀胱の働きにも影響し、排尿症状を悪化させることがあります。
そのため『夜尿症診療ガイドライン2021』でも、便秘の精査・治療が夜尿症診療の重要な項目として扱われています。[1]
ICCSも、夜尿症で重要な併存症の一つとして便秘を挙げ、便秘がある場合には治療することを推奨しています。[2]
ですから、
「便が数日に1回しか出ない」
「硬い便が多い」
「排便するときに痛がる」
「パンツに便が少し付くことがある」
などがあれば、夜尿症だけではなく便秘についても医師へ伝えてください。
夜尿症治療の基本は生活習慣を整えること
夜尿症治療の第一歩は、生活習慣や排尿習慣を整えることです。[1,2]
特別に難しいことをするわけではありません。
ポイントは、
「昼間はしっかり飲み、夜は飲み過ぎない」
ことです。
日中は十分に水分をとる
おねしょを心配するあまり、
「水を飲ませないようにしよう」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、1日中水分を極端に制限する必要はありません。
むしろ、必要な水分は日中にしっかり摂取することが大切です。
朝から昼、午後の早い時間帯までに十分な水分をとり、夕方以降に大量の水分摂取が集中しないようにします。
特に暑い日や運動時には、脱水にならないことの方が重要です。
水分制限を優先しすぎないようにしてください。
夕方から就寝前の「飲み過ぎ」を避ける
夜間に膀胱へたまる尿量が多くなれば、おねしょは起こりやすくなります。
そのため、夕食後から寝るまでの間に、
「喉が渇いていないのに大量に飲む」
「寝る直前にまとめて水分をとる」
といった習慣は避けます。
ただし、
「夜は絶対に飲ませてはいけない」
という意味ではありません。
喉が渇いているときには適量の水分をとって構いません。
極端な制限ではなく、水分摂取の時間配分を昼間中心にするという考え方が大切です。
夕食はできれば寝る直前にならないように
夕食が遅くなり、食事と水分摂取が就寝直前に集中すると、夜間につくられる尿量が増える原因になります。
可能であれば、
夕食から就寝まである程度時間をあける
ようにするとよいでしょう。
また、塩分を多く摂取すると喉が渇き、その後の飲水量も増えやすくなります。
特に夕食後に、
- 塩分の多い食事
- スナック菓子
- 大量の甘い飲料
などを習慣的にとっている場合には、食生活を一度見直してみるのもよいでしょう。
ただし、
「牛乳は禁止」
「果物は禁止」
「アイスは禁止」
というように特定の食品を一律に禁止する必要はありません。
大切なのは、就寝前に大量の水分をとらないことです。
寝る前には必ずトイレへ
これは非常にシンプルですが、大切です。
寝る直前に排尿し、できるだけ膀胱を空にしてから眠るようにします。
「夕食後に一度トイレに行ったから大丈夫」
ではなく、
寝る直前にももう一度トイレへ行く習慣
をつけるとよいでしょう。
排尿習慣を整えることは、夜尿症治療の基本となります。[1,2]
夜中に起こしてトイレへ連れて行った方がいい?
夜尿を防ぐため、
「親が寝る前に子どもを起こして、トイレに連れて行っています」
というご家庭もあると思います。
確かに、その晩のおねしょを防ぐという意味では効果があることがあります。
しかし、
毎晩親が決まった時間に起こして排尿させること自体が、夜尿症を治す治療になるわけではありません。
夜尿症治療で目指したいのは、子ども自身が膀胱の充満を感知し、必要に応じて覚醒したり、朝まで尿をためられるようになることです。
そのため、
「おねしょを絶対にさせないために、毎晩必ず親が起こす」
ということにこだわる必要はありません。
後述する夜尿アラーム療法は、単に親が時間を決めて起こす方法とは異なり、尿が出始めたことをきっかけに本人を覚醒させる治療法です。
「おねしょしなかった日」だけ褒めればいい?
夜尿症のお子さんへの接し方も、とても大切です。
まず覚えておいていただきたいのは、
おねしょは子どもの努力不足ではない
ということです。
夜尿をしてしまった朝に、
「またやったの?」
「もう○年生なのに」
「昨日あれだけ言ったでしょう」
と叱っても、夜尿症の改善にはつながりません。
むしろ子どもの自尊心を傷つけてしまう可能性があります。
また、
「おねしょをしなかったら褒める」
だけにしてしまうのも少し注意が必要です。
夜尿の有無そのものは、子どもが完全に自分でコントロールできるものではないからです。
それよりも、
寝る前にきちんとトイレへ行けた
夕方からの水分摂取を自分で意識できた
排尿日誌をつけることができた
など、
本人が努力できた行動を褒める
方がよいでしょう。
「起こさず・焦らず・怒らず」
夜尿症では昔から、
「起こさず・焦らず・怒らず」
という言葉がよく使われてきました。
すべてのケースに機械的に当てはめる必要はありませんが、
夜尿を本人の責任にせず、家族も焦りすぎない
という考え方は今でも大切です。
おねしょをした朝は淡々と対応する。
そして、
本人ができたことについてはしっかり評価する。
それくらいの距離感でよいと思います。
生活習慣だけで治らない場合は?
ここまでお話ししたような、
- 日中に必要な水分をとる
- 夕方以降の過剰な飲水を避ける
- 寝る前に排尿する
- 便秘があれば治療する
- 子どもを叱らない
といった基本的な対策を行っても夜尿が続く場合には、次の治療を検討します。
代表的なのが、
① 夜尿アラーム療法
と
② デスモプレシンによる薬物治療
です。
ICCSでは、単一症候性夜尿症に対する第一選択治療として、夜尿アラーム療法とデスモプレシンが挙げられています。[2]
次回は、
「夜尿アラーム療法とは?デスモプレシンとの違いと夜尿症の治療法」
について詳しくお話しします。
あわせて読みたい|生活習慣の改善だけでは夜尿症が治らない場合は?
夜尿症は、生活習慣の見直しや便秘への対応などによって改善することがあります。
しかし、こうした対策を続けても、なかなか夜尿症が改善しないお子さんもいます。
そのような場合には、夜尿アラーム療法や薬物療法など、積極的な治療を検討することがあります。
夜尿症の治療に使われる薬や夜尿アラームの効果、治療の選び方については、次の記事で詳しく解説しています。
👉 「夜尿症の薬とアラーム療法は効く?治療の選び方を泌尿器科専門医が解説」
お子さんの夜尿症がなかなか改善せず、お悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
参考文献
[1]日本夜尿症学会 編.夜尿症診療ガイドライン2021.診断と治療社,2021.
日本における夜尿症診療のガイドライン。生活指導、排尿指導、便秘の精査・治療、薬物療法、アラーム療法などについてClinical Questionが設定されています。
[2]Nevéus T, Fonseca E, Franco I, et al. Management and treatment of nocturnal enuresis―an updated standardization document from the International Children’s Continence Society. J Pediatr Urol. 2020;16(1):10-19. doi:10.1016/j.jpurol.2019.12.020.
[3]Nieuwhof-Leppink AJ, Hussong J, Chase J, et al. Definitions, indications and practice of urotherapy in children and adolescents: A standardization document of the International Children’s Continence Society. J Pediatr Urol. 2021;17(2):172-181. doi:10.1016/j.jpurol.2020.11.006.
※この記事は夜尿症に関する一般的な医学情報を提供するものであり、個々のお子さんの診断・治療を目的としたものではありません。昼間の尿失禁、排尿困難、強い口渇、繰り返す尿路感染症などを伴う場合や、症状について心配がある場合は、小児科・泌尿器科などの医療機関へご相談ください。


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