こんにちは、管理人のYUKIです。
今回は、女性にみられる骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)についてお話しします。
「骨盤臓器脱?」
初めて聞く方も多いかもしれません。
以前は「子宮脱」「性器脱」などと呼ばれることも多かった病気です。
診察をしていると、
「膣から丸いものが出てきた」
「夕方になると、股の間に何か挟まっている感じがする」
「お風呂で膣のところを触ったら、何か丸いものに触れた」
と心配して受診される方がいます。
中には、
「内臓が出てきているのでは?」
「破裂したりしないの?」
と、とても不安になっている方もいます。
骨盤臓器脱は、決して珍しい病気ではありません。
今回は、骨盤臓器脱とはどんな病気なのか、どのような症状があるのか、何科を受診すればよいのかについて、できるだけ分かりやすく説明します。
こんな症状はありませんか?
骨盤臓器脱の患者さんでは、次のような症状がみられることがあります。[1,2]
特に特徴的なのが、
「膣から何かが出てくる」「何かが下がってくる感じがする」
という症状です。
医学的にはこのような症状を『 膣の膨隆感(vaginal bulging)』などと表現します。[1]
それって骨盤臓器脱かもしれません
このような症状がある場合、骨盤臓器脱(Pelvic Organ Prolapse:POP)の可能性があります。
骨盤臓器脱とは、膀胱、子宮、膣、直腸などの骨盤内臓器を支えている筋肉や靱帯、結合組織などが弱くなることで、これらの臓器が本来の位置から下がり、膣の方向へ突出してくる状態です。[1,2]
「臓器がそのまま裸で飛び出している」
というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、通常はそうではありません。
外から見えている表面は、基本的には膣の粘膜です。
その膣壁の奥側に膀胱や直腸があり、あるいは子宮や膣の頂部そのものが下降しているため、膣の壁が押し出されるように見えるのです。
「ピンポン玉みたいなもの」が出てきても破裂する?
診察では、
「股から丸いものが出ています。破裂しませんか?」
と心配される方もいます。
骨盤臓器脱そのものが風船のように破裂する病気ではありません。
また、通常は腸や膀胱が裸の状態で直接体外へ出ているわけでもありません。
ですから、
「丸いものが見えた=内臓が破裂しそう」
と考える必要はありません。
ただし、脱出した膣粘膜が下着などと長期間こすれると、粘膜に傷ができたり、びらんや出血を起こしたりすることがあります。
さらに、膣からの出血には子宮・子宮頸部など他の婦人科疾患が隠れている可能性もあります。
そのため、
「骨盤臓器脱だから出血しているだけだろう」
と自己判断することはおすすめしません。
閉経後の出血や繰り返す出血がある場合には、婦人科的な評価も大切です。
骨盤臓器脱にはいくつか種類があります


「骨盤臓器脱」というのは、一つの病気の名前というより、骨盤内の臓器が膣方向へ下がってくる状態の総称です。
代表的なものがあります。
膀胱瘤
膀胱側の膣壁、つまり膣の前側の壁が下がってくるタイプです。
一般には「膀胱瘤」と呼ばれます。
膣の前壁が膨らんでくることで、
などの排尿症状を伴うことがあります。
子宮脱
子宮を支えている組織が弱くなり、子宮そのものが膣の方向へ下降する状態です。
進行すると子宮頸部などが膣口から外へ出てくることがあります。
膣断端脱・膣頂部脱
過去に子宮摘出術を受けている方でも、骨盤臓器脱は起こります。
この場合には、膣の一番奥の部分である膣頂部が下降してくることがあります。
直腸瘤
直腸側の膣壁、つまり膣の後ろ側の壁が膨らんでくるタイプです。
排便時に便が出しにくい、便が残っている感じがする、といった症状を伴うことがあります。
複数の部分が同時に下がっていることも珍しくありません。[1,2]
そのため、
「これは膀胱瘤だけ」
「これは子宮脱だけ」
と外から見ただけで単純に分類できない場合もあります。
朝より夕方に症状が強くなることがあります
骨盤臓器脱の患者さんからよく聞くのが、
「朝は大丈夫なのに、夕方になると下がってきます」
という訴えです。
横になっている間は重力の影響が少ないため、朝は脱出が目立たなくても、日中に立ったり歩いたりしている時間が長くなるにつれて、膣の膨隆感が強くなることがあります。
そのため、
「病院に行ったときには引っ込んでいて、あまり出ていなかった」
ということもあります。
症状には時間帯や活動量による変化があることを、診察時に医師へ伝えると参考になります。
骨盤臓器脱で尿が出にくくなることもあります
骨盤臓器脱は「膣から何か出てくる」だけの病気ではありません。
特に膀胱や膣前壁が大きく下降すると、尿道や膀胱の位置関係が変化し、
尿が出にくい
尿の勢いが弱い
残尿感がある
といった症状が現れることがあります。
一方で、
頻尿、尿意切迫感、尿漏れ
などを伴うこともあります。[1,2]
つまり骨盤臓器脱は、膣の違和感だけではなく、排尿機能にも影響することがある病気です。
骨盤臓器脱は緊急の病気?
多くの場合、骨盤臓器脱は突然命に関わるような緊急疾患ではありません。
そのため、
「膣から何か出ている!」
と気づいても、まず落ち着いてください。
ただし、
といった場合には、早めに医療機関を受診してください。
また、骨盤臓器脱が高度になると排尿障害や残尿を伴うことがあり、まれに上部尿路へ影響することもあります。
症状が続く場合には、緊急性がなくても一度きちんと診察を受けることをおすすめします。
何科を受診すればいいの?
「骨盤臓器脱かもしれない。でも何科へ行けばいいの?」
ここで迷う方は多いと思います。
骨盤臓器脱を診療するのは主に、
婦人科
泌尿器科
です。
特に骨盤臓器脱、尿失禁、排尿障害などを専門的に扱う女性泌尿器科・ウロギネコロジー(女性骨盤底医学)外来を設けている医療機関もあります。
ただし、すべての婦人科・泌尿器科が骨盤臓器脱の専門治療を行っているわけではありません。
受診前に病院のホームページなどで、
「骨盤臓器脱」
「女性泌尿器科」
「ウロギネコロジー」
「骨盤底外来」
などを診療しているか確認しておくとよいでしょう。
恥ずかしくて受診できないという方へ
骨盤臓器脱は、非常にデリケートな部分の病気です。
そのため、
「人には相談しづらい」
「診察されるのが恥ずかしい」
と思い、長い間一人で悩んでいる方もいます。
しかし、骨盤臓器脱は医療現場では決して珍しい病気ではありません。
また、
「骨盤臓器脱だから必ず手術」
というわけでもありません。
症状が軽ければ経過観察になることもありますし、骨盤底筋訓練やペッサリーなどの保存的治療、症状や程度に応じた手術治療など、いくつかの選択肢があります。
現在は、治療方針を患者さんの症状や希望に合わせて選択していくことが重要とされています。[2,3]
まとめ
膣の入り口に丸いものが触れる、
夕方になると何かが下がってくる感じがする、
膣に何か挟まっているような違和感がある。
そんな症状がある場合には、骨盤臓器脱の可能性があります。
骨盤臓器脱には、
などがあり、複数が同時に起きていることもあります。
また、排尿障害、頻尿、尿漏れ、排便症状などを伴う場合もあります。
多くの場合は緊急疾患ではありませんが、症状が続くのであれば、一人で悩まず婦人科や泌尿器科、女性泌尿器科などへ相談してみてください。
次回は、
「骨盤臓器脱はどうやって治す?骨盤底筋訓練・ペッサリー・手術治療」
について詳しく解説します。
骨盤臓器脱と診断されたら、どのような治療があるのでしょうか?
骨盤底筋訓練やペッサリー、LSC・RSCなどの手術について、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 「骨盤臓器脱の治療|ペッサリー・骨盤底筋訓練・LSC・RSCを解説」
参考文献
[1]Haylen BT, Maher CF, Barber MD, et al. An International Urogynecological Association (IUGA)/International Continence Society (ICS) joint report on the terminology for female pelvic organ prolapse (POP). Int Urogynecol J. 2016;27:165-194. doi:10.1007/s00192-015-2932-1.
骨盤臓器脱の症状、解剖学的分類、評価方法などについてIUGAとICSが共同で標準化した用語報告。
[2]American Urogynecologic Society(AUGS). Evaluation and Counseling of Patients With Pelvic Organ Prolapse. Best Practice Statement. 2025.
骨盤臓器脱患者の評価と治療方針を相談する際の基本的な考え方をまとめた文書。
[3]American College of Obstetricians and Gynecologists / American Urogynecologic Society. Pelvic Organ Prolapse. Practice Bulletin No.214. Obstet Gynecol. 2019. Reaffirmed 2024.
※この記事は骨盤臓器脱について一般的な医学情報を提供するものであり、個々の方の診断・治療を目的としたものではありません。膣からの出血、排尿困難、強い痛みなどがある場合には、医療機関へご相談ください。


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