こんにちは、管理人のYUKIです。
「尿が出にくくなった」「おしっこが出るまで時間がかかる」「尿意はあるのに、ほとんど出ない」。
このような排尿の悩みは、年齢とともに増えてきます。
特に注意したいのが、膀 胱に尿がたまっているのに、うまく外へ出せなくなる「尿閉(にょうへい)」です。
尿閉になると、強い尿意や下腹部の張り・痛みを感じることがあります。一方で、少しずつ尿が漏れるような状態になり、「尿が出ているから大丈夫」と思ってしまうこともあります。
今回は、泌尿器科医として排尿障害の診療に携わってきた経験から、
について、できるだけ分かりやすく解説します。
「まったく尿が出ない」「強い尿意があるのに出せない」「下腹部が張って苦しい」という場合は、尿閉の可能性があります。自己判断で様子をみ続けず、早めに医療機関を受診してください。
尿が出にくい「排尿困難」と「尿閉」は違う
まず、「尿が出にくい」という症状と「尿閉」は完全に同じではありません。
例えば、
といった症状は、排尿困難でみられます。
一方、膀胱に尿がたまっているにもかかわらず、尿をまったく、あるいはほとんど出すことができない状態が「尿閉」です。
尿閉には、突然排尿できなくなり、強い尿意や下腹部痛を伴うことがある急性尿閉と、自覚症状が乏しいまま残尿が徐々に増えていく慢性尿閉があります。
【参考】国立がん研究センター がん情報サービス「排尿困難(尿が出にくい)」、医学書院『臨床泌尿器科』79巻5号「尿閉」(2025年)
特に急に尿が出なくなった場合は、早めの対応が必要です。
尿が出なくなる原因は?
尿が出にくくなる原因は一つではありません。
大きく分けると、
①尿の通り道が狭くなる
②膀胱が尿を押し出す力が弱くなる
③排尿をコントロールする神経に問題が起こる
④薬などの影響
などがあります。
前立腺肥大症などで尿の通り道が狭くなる
男性では、特に前立腺肥大症が代表的な原因の一つです。
前立腺が大きくなると尿道が圧迫され、尿が通りにくくなることがあります。
普段から、
「尿の勢いが弱い」
「尿が出始めるまで時間がかかる」
「排尿に時間がかかる」
といった症状がある人では、何らかのきっかけで急に尿閉になることもあります。
膀胱の収縮力が低下する
尿を出すためには、膀胱が適切に収縮する必要があります。
ところが、加齢や神経の障害などによって膀胱の収縮力が低下すると、尿をうまく押し出せなくなることがあります。
神経の問題
脳、脊髄、末梢神経など、排尿に関係する神経に障害が起こると、膀胱と尿道をうまく協調させられなくなることがあります。
糖尿病などの病気が関係する場合もあります。
薬が原因になることも
薬の影響で尿が出にくくなることもあります。
例えば、一部の風邪薬や抗ヒスタミン作用・抗コリン作用を持つ薬など、さまざまな薬剤が排尿に影響する場合があります。
また、手術や麻酔の後などに、一時的に尿が出にくくなることもあります。
【参考】国立がん研究センター がん情報サービス「排尿困難(尿が出にくい)」
「薬を飲んだ後から尿が出にくくなった」という場合も、自己判断で薬を中止せず、処方した医師に相談してください。
尿が出ないとき、放置してはいけない理由
尿が出ない状態を長時間そのままにしておくのはおすすめできません。
膀胱に尿が大量にたまった状態が続くと、膀胱が過度に伸展し、膀胱機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、尿が膀胱内に残り続けることで、尿路感染症などにつながる場合があります。
さらに、尿閉の程度や原因によっては、上部尿路や腎機能への影響が問題になることもあります。
【参考】国立長寿医療研究センター「国立長寿医療研究センターでのBVI 6100の使用」
「少しずつ尿が出ているから大丈夫」とは限りません。
特に、
- まったく尿が出ない
- 強い尿意があるのに出ない
- 下腹部が張って苦しい
- 尿が極端に少なくなった
- 発熱や悪寒がある
- 血尿がある
などの場合には、早めに医療機関へ相談してください。
病院では何を調べる?
尿が出にくい場合、まず症状やこれまでの病気、服用している薬などを確認します。
そのうえで重要なのが、膀胱内にどの程度尿がたまっているのかを確認することです。
代表的なのが超音波検査による残尿測定です。
排尿後の膀胱を超音波で確認することで、膀胱内にどのくらい尿が残っているかを調べることができます。
尿閉が疑われる場合に、まず下腹部の超音波検査を行って膀胱内の尿貯留を確認することは、泌尿器科診療でも重要な評価方法です。
必要に応じて、尿検査や血液検査、その他の画像検査などを行い、尿が出にくくなった原因を調べます。
【参考】国立がん研究センター がん情報サービス「排尿困難(尿が出にくい)」、医学書院『臨床泌尿器科』79巻5号「尿閉」(2025年)
尿がまったく出ないときはどうする?
膀胱に尿がたまっているのに自力で排尿できない場合、まず膀胱内の尿を外へ出す処置が必要になることがあります。
その代表的な方法が、
尿道カテーテルによる導尿
です。
細い管を尿道から膀胱まで入れ、膀胱にたまった尿を体の外へ排出します。
急性尿閉などで膀胱内に多量の尿がたまっている場合、まず導尿による尿ドレナージを検討するのが一般的です。
【参考】国立がん研究センター がん情報サービス「排尿困難(尿が出にくい)」、医学書院『臨床泌尿器科』79巻5号「尿閉」(2025年)
尿道カテーテルとは?
尿道カテーテルは、尿道から膀胱まで細い管を入れて、膀胱にたまった尿を持続的に体の外へ出すためのものです。
カテーテルの先端には、膀胱の中で膨らませるバルーンがついています。
このバルーンによって、カテーテルが簡単に抜けないようになっています。

【ここに元記事の「膀胱尿道留置カテーテル」の画像】
カテーテルの出口側には採尿チューブを接続し、その先に蓄尿バッグを取り付けます。


【ここに元記事の「蓄尿バッグ」の画像】
このようにして、膀胱にたまった尿がカテーテルを通って蓄尿バッグへ流れる仕組みです。
尿道カテーテルを入れたら、ずっと入れたまま?
必ずしもそうではありません。
尿閉の原因や患者さんの状態によって、カテーテルを抜いて自力で排尿できるか確認することがあります。
例えば、
カテーテルを抜く
↓
自分で尿が出るか確認する
↓
排尿後に膀胱に尿が残っていないか確認する
という流れです。
自力で十分に排尿できれば、その後は原因に応じた治療や経過観察を行います。
一方、自力で十分に排尿できない場合には、再度カテーテルを留置したり、間欠的自己導尿など別の排尿管理方法を検討したりします。
カテーテルをどのくらいの期間留置するかは、尿閉の原因や患者さんの状態によって異なります。
尿道カテーテルを入れている間の注意点
尿道カテーテルは尿を排出するために非常に有用ですが、入れておけば完全に安心というわけではありません。
尿道カテーテルを留置していること自体が、カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)のリスクになります。
そのため、カテーテルが本当に必要かを確認し、必要がなくなればできるだけ長期間留置しないことが重要です。
【参考】米国CDC「Guideline for Prevention of Catheter-Associated Urinary Tract Infections/Summary of Recommendations」
蓄尿バッグは膀胱より低い位置に
蓄尿バッグは、基本的に常に膀胱より低い位置に保ちます。
また、チューブが折れ曲がったり、引っ張られたりしないよう注意します。
尿の流れを妨げず、蓄尿バッグを膀胱より低い位置に保つことは、カテーテル管理の基本です。
【参考】米国CDC「Catheter-associated Urinary Tract Infection(CAUTI)Basics」「Summary of Recommendations」
【ここに元記事のカテーテル使用方法の画像】
水分は「たくさん飲めばよい」とは限らない
カテーテルを留置しているからといって、すべての人が一律に大量の水分を摂取すればよいわけではありません。
水分摂取量は、年齢、食事、心臓や腎臓の状態、治療内容などによって異なります。
特に心不全や腎疾患などで水分量について指示を受けている場合は、主治医の指示を優先してください。
カテーテルはどのくらいの頻度で交換する?
「尿道カテーテルは必ず1か月に1回交換する」
と一律に決められるわけではありません。
実際の診療ではカテーテルの種類、使用状況、閉塞の起こりやすさなどによって交換時期を決めることがあります。
また、CDCのカテーテル関連尿路感染症予防ガイドラインでは、感染、閉塞、閉鎖式システムの破綻などの臨床的な必要性がないのに、固定された一定間隔でカテーテルや蓄尿バッグを交換することは推奨されていません。
【参考】米国CDC「Summary of Recommendations:Changing indwelling catheters or drainage bags」
したがって、実際の交換時期については、主治医や泌尿器科医、訪問診療など、カテーテル管理を担当する医療者の指示に従ってください。
外出するときはどうする?
尿道カテーテルを入れているからといって、必ずしも外出をあきらめる必要はありません。
例えば、レッグバッグと呼ばれる小型の蓄尿バッグを使用すると、衣服の下に装着して比較的目立たない状態で外出できる場合があります。

【ここに元記事のレッグバッグの画像】
買い物、散歩など、日常生活の中で外出することも可能です。
ただし、カテーテルやチューブを引っ掛けないよう注意し、尿の流れを妨げないことが大切です。
カテーテルバルブを使う方法もある
尿道カテーテルの先に専用のカテーテルバルブを取り付け、一定時間ごとに尿を排出する方法もあります。

【ここに元記事のDIBキャップの画像】
蓄尿バッグを常に装着する必要がないため、衣服の外からカテーテルを入れていることが分かりにくいという利点があります。
ただし、すべての患者さんに適しているわけではありません。
使用できるかどうかについては、膀胱機能や尿閉の原因などを考慮する必要がありますので、主治医や泌尿器科医に相談してください。
カテーテルを抜いても尿が出ない場合は?
ここが尿閉治療では非常に重要なポイントです。
カテーテルを抜いた後に自力で十分に排尿できなかった場合には、再び尿道カテーテルを留置する方法だけではありません。
患者さん自身や介助者が、必要なときにカテーテルを尿道から膀胱へ挿入して尿を排出し、その後カテーテルを抜く方法があります。
これを、
間欠的自己導尿(CIC:Clean Intermittent Catheterization)
といいます。
国立がん研究センターの排尿困難に関する解説でも、症状が長く続く場合の排尿管理方法の一つとして自己導尿が紹介されています。
【参考】国立がん研究センター がん情報サービス「排尿困難(尿が出にくい)」
自己導尿については、次の記事で詳しく解説します。
👉 「尿が出にくい・出ない②|間欠的自己導尿(CIC)とは?」
まとめ|尿が出にくい・出ないときは、まず原因を調べることが大切
「尿が出にくい」という症状には、前立腺肥大症、尿道の通過障害、膀胱の収縮力低下、神経の障害、薬剤の影響など、さまざまな原因があります。
そして、膀胱に尿がたまっているにもかかわらず、まったく、あるいはほとんど尿を出せない状態を尿閉といい、早めの対応が必要になることがあります。
病院では症状や原因を確認し、必要に応じて超音波検査などで膀胱内に残っている尿の量を調べます。
尿が多量にたまっている場合には、導尿や尿道カテーテルなどを使って尿を体の外へ出す処置を行います。
カテーテルは尿閉の治療に非常に役立つ一方、長期間留置することでカテーテル関連尿路感染症などの問題が起こる可能性があります。
そのため、
「必要性を確認しながら、適切に管理する」
ことが重要です。
もしカテーテルを抜いても自力で十分に排尿できない場合には、再留置だけでなく、間欠的自己導尿(CIC)などの方法もあります。
「尿が出にくくなったけれど、年齢のせいだろう」と放置せず、気になる症状が続く場合は、一度泌尿器科などの医療機関で相談してみてください。
参考資料
この記事では、筆者自身の泌尿器科診療の経験に加え、以下の公的機関・医学専門資料を参考にしています。
- 国立がん研究センター がん情報サービス
「排尿困難(尿が出にくい)」 - 東武昇平・前田晃宏・野口満
「尿閉」
『臨床泌尿器科』79巻5号、pp.349-354、医学書院、2025年4月 - 米国Centers for Disease Control and Prevention(CDC)
「Guideline for Prevention of Catheter-Associated Urinary Tract Infections」
「Summary of Recommendations」 - 国立長寿医療研究センター
「国立長寿医療研究センターでのBVI 6100の使用」
※本文は上記資料を参考に筆者が一般の方向けに分かりやすくまとめたものであり、各資料の文章をそのまま転載したものではありません。
この記事を書いた人
YUKI|泌尿器科専門医
泌尿器科専門医・指導医として、排尿障害をはじめとする泌尿器科診療に携わってきました。
現在は在宅医療にも携わり、通院が難しくなった方の診療も行っています。
このブログでは、医師としての専門知識だけでなく、自身の人生経験も交えながら、50歳からの健康・お金・暮らしについて、できるだけ分かりやすくお伝えしています。
※この記事は一般的な医学情報を提供することを目的としたもので、個々の患者さんの診断や治療を代替するものではありません。症状が強い場合や尿がまったく出ない場合などは、医療機関にご相談ください。


コメント