こんにちは。管理人のYUKIです。
今回は、年齢を重ねるにつれて悩む方が増えてくる、「夜間頻尿(やかんひんにょう)」についてお話ししたいと思います。
皆さんは、夜中に何度もトイレに起きて、困った経験はありませんか?
「夜中に2回も3回もトイレに起きる」
「せっかく眠れたのに、尿意で目が覚めてしまう」
「トイレから戻っても、なかなか寝つけない」
こんな悩みを抱えている方は、決して少なくありません。
私も泌尿器科の外来で、こうした相談を数多く受けてきました。
夜間頻尿で厄介なのは、単にトイレの回数が増えることだけではありません。
睡眠が妨げられることで、翌日の体調や日常生活にも影響してしまうことです。
しかも、夜間頻尿の原因は一つではありません。
膀胱の問題だと思っていたら、実は睡眠や心臓、腎臓の病気が関係していた、ということもあるのです。
今回は、夜間頻尿とはどのような症状なのか、そして主な原因について、泌尿器科専門医の立場からわかりやすく解説します。
それでは、いってみましょう!
夜間頻尿とは?夜中に何回起きたら問題なの?
まず、夜間頻尿とは何でしょうか?
医学的には、夜間、睡眠中に排尿のために1回以上起きることを夜間頻尿といいます。
「えっ! たった1回でも夜間頻尿なの?」
そう思われるかもしれませんね。
実は、医学的な定義では1回以上なのです。
ただし、夜中に1回トイレへ行くからといって、必ずしも病気というわけではありません。
例えば、夜中に1回トイレへ行っても、その後すぐに眠れて、翌朝スッキリ目覚める方もいらっしゃいます。
このような場合は、日常生活に大きな支障がないこともあります。
一方で、夜中に1回起きただけでも、その後なかなか眠れなくなり、翌朝まで寝不足になってしまう方もいます。
つまり、大切なのは回数だけではありません。
夜間の排尿によって、睡眠や生活の質がどの程度妨げられているかも重要なのです。
一般的に、夜間の排尿回数が2回以上になると、生活への影響が問題になることが多くなります。
夜間頻尿はなぜ高齢になるほど増えるの?
夜間頻尿は、加齢とともに増加する傾向があります。
その理由は、年齢を重ねることで、排尿に関係するさまざまな身体の機能が変化するためです。
例えば、
といったことが挙げられます。
特に40歳代以降になると、こうした変化が少しずつ現れることがあります。
ただし、夜間頻尿は高齢者だけの症状ではありません。
若い方でも、水分の摂りすぎや睡眠障害、糖尿病などが原因で起こることがあります。
外来でよく聞く「夜中だけトイレが近い」という悩み
泌尿器科の外来で患者さんにお話をうかがうと、こんな訴えをよく耳にします。
「先生、夜中に何回もトイレに起きるんですよ」
「昼間はそんなにトイレに行かないんですけどねぇ」
さらに詳しく聞いてみると、
「昼間は午前中と午後に2〜3回ずつくらいかな。でも、夜になると1〜2時間おきにトイレに起きるんだよね」
とおっしゃる方もいます。
皆さん、夜中のトイレに本当に困っているのです。
ところが、同じように夜中に何回も起きていても、あまり困っていない方もいらっしゃいます。
なぜでしょうか?
それは、睡眠の状態が人によって違うからです。
夜中にトイレに起きても、布団に戻ればすぐに眠れる方は、それほど苦痛に感じない場合があります。
反対に、もともと寝つきが悪い方は、たった1回の排尿でも目がさえてしまい、その後眠れなくなることがあります。
「また起きてしまった……」
「早く寝ないと明日に響く……」
そんなことを考えているうちに、ますます眠れなくなってしまう。
こうした悪循環に悩まされる方も少なくありません。
夜間頻尿が厄介なのは、まさにこの点なのです。
夜間頻尿の原因は大きく3つに分けられる
さて、ここからが今回の本題です。
夜間頻尿の原因には、医学的にさまざまなものがあります。
専門的には、水利尿、ナトリウム利尿、浸透圧利尿、尿濃縮障害など、少し難しい言葉が登場します。
「なんのこっちゃ?」
ですよね。
今回は細かい医学用語をできるだけ使わず、わかりやすく説明したいと思います。
夜間頻尿の原因は、大きく分けると次の3つです。
① 夜間に作られる尿の量が多い
② 膀胱に十分な尿をためられない
③ 睡眠の問題によって何度も目が覚める
実際には、これらの原因が複数重なっていることもあります。
それでは、一つずつ見ていきましょう。
原因① 夜間に作られる尿の量が多い
まず、一つ目は「夜間多尿(やかんたにょう)です。
これは、眠っている間に作られる尿の量が多くなってしまう状態です。
通常、私たちの身体には、睡眠中の尿の産生を調節する仕組みが備わっています。
その一つが、抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)の働きです。
このホルモンは腎臓で水分を再吸収する働きを促し、尿の量を調節しています。
しかし、加齢などによって尿を調節する仕組みが変化すると、夜間の尿量が増えやすくなることがあります。
その結果、膀胱に尿がたまり、何度もトイレに起きることになるのです。
ただし、夜間多尿の原因は、ホルモンの変化だけではありません。
水分の摂りすぎ
まず考えられるのが、水分の摂りすぎです。
特に就寝前に大量の水分を摂る習慣がある方は、夜間の尿量が増えることがあります。
もちろん、水分は身体に必要なものです。
しかし、必要以上に飲めば、その分、尿として排泄される量が増える場合があります。
高血圧や心不全、腎機能の低下
実は、夜間頻尿には内科的な病気が関係していることもあります。
例えば、高血圧、心不全、腎機能障害などです。
こうした病気では、体内の水分や塩分を調節する仕組みに変化が生じ、夜間の尿量が増える場合があります。
特に心不全などで足にむくみがある方では、日中、下半身にたまっていた水分が、横になって眠ることで血液中に戻り、腎臓から尿として排泄されることがあります。
そのため、昼間より夜間の尿量が増えてしまうのです。
「昼間はそれほどトイレに行かないのに、夜になると何回も行く」
このような患者さんでは、膀胱だけでなく全身の状態にも目を向ける必要があります。
糖尿病などによる尿量の増加
また、糖尿病などによって1日全体の尿量が増え、その結果、夜間の排尿回数も増えることがあります。
これは、夜間だけ尿量が多くなる「夜間多尿」とは区別して考える必要があります。
頻度は高くありませんが、尿崩症など、尿を濃縮する仕組みに異常が生じる病気が関係する場合もあります。
つまり、夜間に尿が多く作られる原因は、決して一つではないのです。
原因② 膀胱に十分な尿をためられない
二つ目は、膀胱の蓄尿機能の問題です。
わかりやすく言えば、膀胱に尿を十分ためられなくなる状態ですね。
例えば、通常ならある程度の尿がたまっても我慢できるのに、少し尿がたまっただけで強い尿意を感じてしまう。
こうした状態になると、1回の排尿量が少なくなり、トイレへ行く回数が増えてしまいます。
代表的な病気には、次のようなものがあります。
過活動膀胱
過活動膀胱は、突然、我慢することが難しいほどの強い尿意が起こる病気です。
一般的には、昼間の頻尿や夜間頻尿を伴うことが多く、尿もれが起こる場合もあります。
前立腺肥大症
男性では、前立腺肥大症も重要な原因の一つです。
前立腺が大きくなることで尿が出にくくなり、膀胱に負担がかかったり、排尿後に尿が残ったりすることがあります。
その結果、頻尿や夜間頻尿につながる場合があるのです。
ただし、前立腺が大きいからといって、すべての夜間頻尿が前立腺肥大症によるものとは限りません。
その他の膀胱の病気
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群や、女性の骨盤臓器脱なども、夜間頻尿に関係することがあります。
以前の記事でも、骨盤臓器脱について解説しましたが、排尿の問題はさまざまな病気と関係しているのです。
原因③ 睡眠障害によって何度も目が覚める
三つ目は、睡眠の問題です。
これは少し意外に思われるかもしれません。
「トイレに行きたいから目が覚めるんじゃないの?」
そう思いますよね。
もちろん、尿意によって目が覚めることもあります。
しかし、実際には逆のパターンもあるのです。
つまり、眠りが浅くて先に目が覚め、そのときに尿意を感じてトイレに行くというパターンです。
通常、睡眠中は脳の覚醒状態や尿意の感じ方が変化しています。
ところが、睡眠が浅くなって目が覚めると、それまで気にならなかった尿意を意識することがあります。
その結果、トイレに行く回数が増えてしまうのです。
この場合、膀胱や腎臓だけを治療しても、十分に改善しない可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群にも注意
もう一つ、知っておいていただきたい病気があります。
それが、睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりすることで、睡眠の質が低下する病気です。
実は、睡眠時無呼吸症候群では、単に途中で目が覚めやすくなるだけでなく、ホルモンなどの変化によって夜間の尿量そのものが増える場合もあります。
大きないびきをかく方、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された方、日中に強い眠気がある方などでは注意が必要です。
夜間頻尿の背景に、こうした睡眠の病気が隠れていることもあるのです。
夜間頻尿の原因を調べるには?「排尿日誌」が役に立つ
ここまで、夜間頻尿の主な原因について説明してきました。
それでは、自分の夜間頻尿がどのタイプなのか、どうすればわかるのでしょうか?
そこで役に立つのが、「排尿日誌」です。
排尿日誌とは、トイレに行った時間と排尿量などを記録するものです。
例えば、2〜3日程度、次のような内容を記録してみます。
こうした記録を確認することで、夜間頻尿の原因を推測する手がかりになります。
例えば、夜中の排尿量が毎回多い場合は、尿が多く作られている可能性があります。
一方、1回の排尿量が少ない場合には、膀胱に十分な尿をためられないことが関係しているかもしれません。
もちろん、これだけで病気を確定できるわけではありません。
しかし、排尿日誌は、夜間頻尿の原因を調べるうえで非常に重要な情報になります。
実際の診療でも、私たち泌尿器科医が参考にする検査の一つです。
夜間頻尿は年齢のせいと決めつけないことが大切
「もう年だから仕方ないよね」
夜間頻尿について、患者さんからこうした言葉を聞くことがあります。
確かに、加齢による身体の変化は関係しています。
しかし、すべてを年齢のせいにしてしまうのは、少しもったいないことだと思います。
なぜなら、夜間頻尿には、原因を調べて対処することで改善が期待できるものもあるからです。
また、夜中に何度も起きることは、睡眠不足だけでなく、特に高齢者では暗い場所での転倒にもつながりかねません。
次のような場合には、医療機関で相談することをおすすめします。
特に、強い息切れや急激なむくみ、尿がほとんど出ないといった症状を伴う場合には、早めの医療機関受診が必要です。
また、夜間頻尿があるからといって、自己判断で極端に水分を制限することもおすすめできません。
脱水などを防ぎながら、原因に応じた適切な対策を考えることが重要です。
まとめ|夜間頻尿の原因は大きく3つ
今回は、夜間頻尿について、その定義と主な原因を中心に解説しました。
少し長くなりましたので、最後に整理しておきましょう。
夜間頻尿の原因は、大きく3つに分けられます。
① 夜間に作られる尿の量が多い
水分の摂りすぎ、加齢による尿量調節の変化、高血圧、心不全、腎機能障害などが関係することがあります。
② 膀胱に尿を十分ためられない
過活動膀胱、前立腺肥大症など、膀胱や排尿機能の問題によって起こることがあります。
③ 睡眠の問題によって何度も目が覚める
睡眠が浅いことや睡眠障害などが関係している場合があります。
ここで大切なのは、夜間頻尿の原因は人によって異なり、複数の原因が重なっていることもあるという点です。
したがって、夜間頻尿を改善するためには、まず原因を正しく調べる必要があります。
「夜中に何度もトイレに起きるから、とりあえず頻尿の薬を飲めばよい」
必ずしも、そういうわけではないのです。
夜間頻尿は単純なようで、実は奥が深い症状なんですね。
あわせて読みたい|夜間頻尿の治療法と生活習慣
さて、今回は夜間頻尿の原因についてお話ししました。
では、皆さんが一番知りたいのは、やはりここではないでしょうか。
「結局、夜間頻尿はどうすれば治るの?」
夜間頻尿を改善するには、原因に応じた治療や生活習慣の見直しが大切です。
具体的な治療方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉「夜間頻尿は治る?治療法と生活習慣を泌尿器科医が解説【治療編】」。
生活習慣の見直しで改善が期待できる場合もあれば、お薬や原因となる病気の治療が必要な場合もあります。
また、治療をしても、なかなか思うように改善しないケースがあるのも事実です。
そのあたりについても、泌尿器科医としての経験を交えながら、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。
今回の記事が、夜間頻尿に悩む皆さんのお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また次回。
チャオ!
参考文献
本記事は、以下の診療ガイドラインおよび学会の公開情報を参考に作成しています。
1.日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会
『夜間頻尿診療ガイドライン 第2版』(2020年発行、2024年12月アップデート内容追加)
夜間頻尿の定義、原因、診断、排尿日誌、治療についてまとめた診療ガイドラインです。
2.日本泌尿器科学会
『夜間、何度も排尿で起きる』
夜間頻尿の主な原因、診断、治療について、一般の方向けに解説した資料です。
3.日本泌尿器科学会
『尿が近い、尿の回数が多い ~頻尿~』
頻尿の原因や排尿日誌の活用について解説した資料です。
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。症状の原因や適切な治療法は個人によって異なります。気になる症状がある場合は医療機関へご相談ください。


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