夜尿症の薬とアラーム療法は効く?治療の選び方を泌尿器科専門医が解説

健康・医療

こんにちは、管理人のYUKIです。

これまで夜尿症(おねしょ)について、

「なぜ起こるのか?」

「家庭ではどんなことに気をつければよいのか?」

についてお話ししてきました。

→あわせて読みたい|夜尿症の原因と家庭でできる対策

夜尿症の原因や、家庭でできる生活習慣の改善方法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

■ 夜尿症の原因や子どもへの影響を知りたい方へ

👉 小学生のおねしょはいつまで?夜尿症の原因と子どもへの影響を泌尿器科専門医が解説

■ 家庭でできる生活習慣の改善や便秘対策を知りたい方へ

👉 子どもの夜尿症はどう治す?生活習慣と便秘対策を泌尿器科専門医が解説

今回はいよいよ夜尿症の積極的な治療についてです。

生活習慣を整えたり、便秘を治療したりしても夜尿が続く場合には、

薬による治療

や

夜尿アラーム療法

を検討します。

夜尿症の治療では、主に

①デスモプレシン

②夜尿アラーム療法

が重要な治療法です。[1,2]

今回は、それぞれどのような治療なのかを分かりやすく説明します。

夜尿症の積極的治療

単一症候性夜尿症、つまり昼間の尿失禁や排尿困難などを伴わない夜尿症では、国際小児禁制学会(ICCS)はデスモプレシンまたは夜尿アラーム療法を第一選択治療としています。[2]

どちらを選択するかは、

  • 夜尿のタイプ
  • 夜尿の頻度
  • 本人や家族の希望
  • 宿泊行事など短期間で夜尿を抑えたい事情
  • 家族がアラーム療法に取り組めるか

などを考えて決めていきます。

薬による治療

デスモプレシンとは?

夜尿症の代表的な治療薬がデスモプレシンです。

デスモプレシンは、体内の抗利尿ホルモン(バソプレシン)に似た作用を持つ薬です。

簡単にいうと、

夜につくられる尿の量を減らす薬

です。

夜尿症の子どもの中には、睡眠中につくられる尿量が多い「夜間多尿」が関係している場合があります。

そこでデスモプレシンによって夜間の尿産生量を減らし、膀胱から尿があふれるのを防ぎます。[1,2]

現在はミニリンメルトOD錠が中心

日本では夜尿症に対して、

ミニリンメルトOD錠120µg・240µg

が使用されています。[3]

通常は120µgから開始し、効果が不十分な場合には医師の判断で240µgへ増量することがあります。

口腔内崩壊錠なので、水をたくさん飲んで服用する必要がないことも特徴です。

以前は夜尿症に対してデスモプレシンの点鼻薬も使用されていましたが、現在の記事では内服薬を中心に理解しておけばよいでしょう。

デスモプレシンで最も注意したい「水中毒」

デスモプレシンを使う際に、非常に重要なのが水分摂取の管理です。

デスモプレシンは尿をつくる量を減らします。

その状態で必要以上に大量の水分を摂取すると、体内に水分がたまりすぎて血液中のナトリウム濃度が低下することがあります。

これを低ナトリウム血症といい、重症の場合には水中毒を起こす可能性があります。[3]

症状としては、

  • 頭痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 倦怠感
  • 意識がおかしい
  • けいれん

などがみられることがあります。

したがって、デスモプレシンを使用するときには、医師から指示された飲水制限をきちんと守ることが非常に重要です。

また、発熱、嘔吐、下痢などで体内の水分バランスが崩れているときには、服薬について主治医へ確認する必要があります。

「おねしょの薬だから安全だろう」

と自己判断で使用するのではなく、必ず医師の指示に従ってください。

デスモプレシンはすぐ効く?

デスモプレシンの特徴の一つは、効果が比較的早く現れやすいことです。

そのため、

「学校の宿泊行事がある」

「林間学校や修学旅行までに何とかしたい」

という場合にも使用されることがあります。

ただし、デスモプレシンは「夜につくられる尿を減らしている」薬です。

服用中は夜尿が改善していても、中止すると再び夜尿がみられることがあります。

そのため、症状をみながら継続方法や減量・中止時期を医師と相談していきます。

抗コリン薬はどんなときに使う?

抗コリン薬は、膀胱が過剰に収縮するのを抑え、膀胱に尿をためやすくする薬です。

しかし、単純な夜尿症に対して最初から使用する薬ではありません。

ICCSでは、

デスモプレシンや夜尿アラーム療法で十分な効果が得られない場合

などに、抗コリン薬を追加することが選択肢になります。[2]

特に、膀胱容量が小さい場合や、昼間の尿意切迫感・頻尿などの膀胱症状を伴っている場合には、治療の選択肢となることがあります。

抗コリン薬には口渇や便秘などの副作用があり、特に便秘は夜尿症そのものを悪化させる要因になる可能性があります。

そのため、使用する場合には便通についても確認する必要があります。

三環系抗うつ薬は現在どう使われる?

三環系抗うつ薬の一つであるイミプラミンは、以前から夜尿症の治療に使用されてきました。

しかし現在では、

デスモプレシン

夜尿アラーム療法

といった治療が第一選択です。[1,2]

三環系抗うつ薬は、これらの治療を行っても十分な効果が得られない難治例などで、専門医が慎重に検討する薬という位置づけです。

過量投与による重篤な副作用の問題もあるため、一般的に最初から選択する治療ではありません。

夜尿アラーム療法とは?

薬を使わない代表的な治療が夜尿アラーム療法です。

下着などに小さなセンサーを装着し、睡眠中に尿が出始めると、

音や振動でアラームが作動する

仕組みになっています。

アラームが鳴ったら子どもを起こし、トイレへ行って排尿させます。

これは単に、

「夜○時になったら親が子どもを起こす」

という方法とは異なります。

実際に尿が出始めたタイミングで刺激を与える

ところがポイントです。

夜尿アラーム療法は、夜尿症に対する標準的な治療法の一つであり、日本のガイドラインおよびICCSでも第一選択治療として位置づけられています。[1,2]

なぜアラームでおねしょが治るの?

「尿が出たら音が鳴るだけなのに、なぜおねしょが治るの?」

と思う方も多いでしょう。

実は、その作用機序は完全には解明されていません。

治療を繰り返すことによって、

膀胱に尿がたまった刺激に対する覚醒反応

や、

夜間に尿を保持する能力

などが変化していくと考えられています。[1,2]

つまり、単に毎晩アラームで起こすだけではなく、

夜尿を起こさない身体の仕組みを徐々に獲得していく治療

と考えると分かりやすいでしょう。

夜尿アラーム療法のメリット

デスモプレシンと大きく違うのは、治療終了後も効果が維持される可能性があることです。

デスモプレシンは服用している間に尿量を抑える作用が中心ですが、アラーム療法は繰り返し行うことによって夜尿そのものの改善を目指します。

そのため、

長期的な治癒を目指す治療

として重要です。

一方で、アラーム療法は家族の協力が必要

夜尿アラーム療法にはデメリットもあります。

最大の問題は、

本人だけでなく家族にも負担がかかる

ことです。

夜中にアラームが鳴っても、子どもが自分で起きられないことは珍しくありません。

その場合、保護者が起きて、

「アラーム鳴っているよ」

と子どもを起こし、トイレへ連れて行く必要があります。

これを何週間も続けるわけですから、本人だけでなく保護者にもある程度の根気が必要です。

また、

  • アラーム音で家族が起きる
  • 子どもがなかなか覚醒しない
  • 装置を嫌がる
  • 夜中の対応が保護者の負担になる

などの理由から途中で中止してしまうこともあります。

したがって、

「医学的によい治療=すべての家庭に向いている治療」

とは限りません。

家族の生活スタイルも含めて選択することが大切です。

アラーム療法はどのくらい続ける?

ここは大切なポイントです。

夜尿アラーム療法は、

数日で効果を判定する治療ではありません。

一定期間継続して初めて効果が分かります。

一般には数週間から数か月かけて取り組み、夜尿の頻度がどのように変化するかを確認していきます。[1,2]

以前は「最低6か月行う」と説明されることもありましたが、

すべての子どもに一律6か月続ける

という考え方ではありません。

反応があるかを途中で評価しながら、継続するか、別の治療へ切り替えるかを判断します。

「全然変わらないのに半年間ひたすら続ける」

必要はありません。

デスモプレシンとアラーム、どちらがいい?

これはよく聞かれる質問です。

どちらが優れた治療というより、特徴が違います。

デスモプレシンは、

比較的早く効果を期待したい場合

に使いやすい治療です。

一方、夜尿アラーム療法は、

時間はかかりますが、長期的な改善を目指す治療

です。

また、夜間多尿が目立つ子どもではデスモプレシンが適していることがあり、膀胱容量や覚醒の問題が大きい場合にはアラーム療法が選択されることがあります。

そして、一つの治療で十分な効果が得られない場合には、両者を組み合わせて治療することもあります。[1]

まとめ

夜尿症の積極的治療では、

デスモプレシン

と

夜尿アラーム療法

が中心となります。

デスモプレシンは夜間につくられる尿の量を減らす薬で、比較的早い効果が期待できます。

一方、夜尿アラーム療法は、尿が出始めたときにアラームを鳴らして覚醒を促す治療で、改善まで時間はかかりますが、長期的な効果を期待できる治療です。

どちらを選ぶかは、夜尿症のタイプだけでなく、本人や家族の希望、生活環境なども考えて決めます。

また、第一選択治療だけで改善しない場合には、抗コリン薬などを併用したり、専門医による詳しい評価を行ったりすることもあります。

夜尿症は、

「いつか治るから何もしなくてもいい」

だけではなく、現在はきちんと治療方法がある病気です。

本人が悩んでいる場合には、無理に我慢せず、小児科や泌尿器科へ相談してみてください。


参考文献

[1]日本夜尿症学会 編.夜尿症診療ガイドライン2021.診断と治療社,2021.

デスモプレシン、抗コリン薬、三環系抗うつ薬、夜尿アラーム療法および併用療法についてClinical Questionが設定されています。

[2]Nevéus T, Fonseca E, Franco I, et al. Management and treatment of nocturnal enuresis―an updated standardization document from the International Children’s Continence Society. J Pediatr Urol. 2020;16(1):10-19. doi:10.1016/j.jpurol.2019.12.020.

[3]独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA).ミニリンメルトOD錠60µg/120µg/240µg 電子添文.

※この記事は夜尿症について一般的な医学情報を提供するものであり、個々のお子さんに対する診断・治療を目的としたものではありません。薬の種類、用量、水分摂取方法などについては、必ず主治医の指示に従ってください。

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