尿もれ(尿失禁)には種類がある!5つのタイプと症状の違いを泌尿器科医がわかりやすく解説

健康・医療

どうも、管理人のYUKIです。

今回は「尿もれ」に照準をあててお話ししたいと思います。

「くしゃみをしたら少し漏れてしまった」

「急におしっこがしたくなって、トイレまで間に合わなかった」

「最近、知らないうちに下着が濡れていることがある」

こんな経験はありませんか?

尿もれは医学的には「尿失禁(にょうしっきん)」といいます。

国際禁制学会(International Continence Society:ICS)では、尿失禁は自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことと定義されています[1]。

尿もれというと、特に女性の症状というイメージがあるかもしれません。

実際、妊娠や出産をきっかけに尿もれを経験する女性は少なくありません。

一方で、男性にも尿失禁はあります。

加齢や前立腺の病気、前立腺がんなどに対する手術、神経の病気など、さまざまな原因によって尿もれが起こることがあります[2,3]。

そして、ここでぜひ知っておいてほしいことがあります。

「尿もれ=すべて同じ病気」ではありません。

ひとことで尿失禁といっても、いくつかの種類があります。

そして、

尿が漏れる原因によって治療法も変わります。

今回はまず、

「自分の尿もれは、どのタイプなのか?」

を考えるために、代表的な尿失禁について見ていきたいと思います。

それでは、いってみましょう!


尿もれ(尿失禁)にはいくつかのタイプがあります

代表的な尿失禁をまとめると、次のようになります[2,3]。

尿失禁のタイプ主な症状
腹圧性尿失禁咳、くしゃみ、ジャンプなどで漏れる
切迫性尿失禁急に強い尿意が起こり、トイレまで我慢できず漏れる
混合性尿失禁腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方がある
機能性尿失禁歩行障害や認知機能低下などによってトイレまで間に合わず漏れる
溢流性尿失禁尿を十分に出せず膀胱に尿がたまり、少しずつ漏れる

同じ「尿もれ」でも、かなり違いますよね。

それぞれ詳しくみていきましょう。


腹圧性(ふくあつせい)尿失禁

まず代表的なのが、腹圧性尿失禁 です。

たとえば、

  • 咳をしたとき
  • くしゃみをしたとき
  • 大きく笑ったとき
  • 走ったとき
  • ジャンプしたとき
  • 縄跳びをしたとき
  • 重いものを持ち上げたとき

などです。

このようなお腹に力がかかる動作をしたときに、意思とは関係なく尿が漏れてしまうのが腹圧性尿失禁です[1,2]。

国際禁制学会(ICS)でも、腹圧性尿失禁は、身体を動かしたときや運動時、咳やくしゃみなどに伴って尿が漏れる状態として定義されています[1]。


「尿意がないのに漏れる」ことも

腹圧性尿失禁では、

「おしっこがしたくて我慢できずに漏れる」わけではありません。

たとえば、

子どもと一緒に縄跳びをしていて、

ピッ。

走った瞬間に、

ピッ。

くしゃみをした瞬間に、

あっ……。

という感じです。

「トイレに行きたい!」

という強い尿意がなくても、お腹に力がかかった瞬間に尿が漏れてしまいます。

もちろん腹圧性尿失禁の方にも普通の尿意はあります。

ここでいう「尿意がなくても漏れる」というのは、

後ほど説明する切迫性尿失禁のような強い尿意が、尿もれの直接の原因ではない

という意味です。


なぜ腹圧性尿失禁が起こるの?

膀胱や尿道は、骨盤の底にある骨盤底筋(こつばんていきん)などによって支えられています。

ところが、

  • 妊娠
  • 出産
  • 加齢
  • 肥満
  • 骨盤底の支持力の低下

などによって、尿道を支える力が弱くなることがあります[2]。

すると、咳やくしゃみなどによって急激にお腹の圧力が上がったときに、尿道を十分に閉じておくことができません。

その結果、

お腹に力がかかる
↓
膀胱にも圧力がかかる
↓
尿道で尿を止めきれない
↓
尿が漏れる

ということが起こります。

特に、

「出産してから尿もれするようになった」

という女性は少なくありません。

ただし、

出産経験のない女性でも腹圧性尿失禁は起こります。

また男性の場合には、前立腺がんなどに対する前立腺手術後に腹圧性尿失禁がみられることがあります[4]。


切迫性(せっぱくせい)尿失禁

次は、

切迫性尿失禁

です。

こちらは腹圧性尿失禁とは尿の漏れ方がかなり違います。

それまで普通に過ごしていたのに、

突然、

「トイレ!今すぐ行きたい!」

という強い尿意が襲ってきます。

しかも、

「あと5分我慢しよう」

「家に着くまで我慢しよう」

ということが非常に難しい。

トイレへ急いで向かいますが、

間に合わず漏れてしまう。

これが切迫性尿失禁です[1,2]。


普通の尿意とは少し違います

通常の尿意なら、

「そろそろトイレに行こうかな」

と思ってから、ある程度は我慢できますよね。

ところが切迫性尿失禁の原因になる尿意は、

突然起こり、我慢することが難しいほど強い尿意

です。

このような症状を医学的には、

尿意切迫感(にょういせっぱくかん)

と呼びます[3]。

たとえば、

  • 玄関に着いて鍵を開けようとすると急にトイレに行きたくなる
  • トイレを目の前にすると急に我慢できなくなる
  • 水の音を聞くと急に尿意が強くなる

といったことを経験する方もいます。

本人の意思だけではコントロールが難しく、

「漏れるのが怖くて電車に乗れない」

「外出すると、いつも最初にトイレの場所を確認する」

など、日常生活にも大きな影響を与えることがあります。


切迫性尿失禁と「過活動膀胱」は同じなの?

ここは非常に混同されやすいところです。

過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)

という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

過活動膀胱とは、

尿意切迫感を必須症状として、通常は頻尿や夜間頻尿を伴う症候群

です[3]。

重要なのは、

過活動膀胱だからといって、必ず尿が漏れるわけではない

ということです。

強い尿意はあるけれど、なんとか我慢してトイレまで間に合う人もいます。

一方、

強い尿意が起こって、そのまま我慢できず尿が漏れてしまえば、

切迫性尿失禁

ということになります。

つまり、

過活動膀胱の症状のひとつとして切迫性尿失禁がみられることがある

と考えると分かりやすいと思います。


混合性(こんごうせい)尿失禁

続いて、

混合性尿失禁

です。

名前の通り、

腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方をあわせ持っている状態

をいいます[1]。

たとえば、

「くしゃみをすると尿が漏れる」

という腹圧性尿失禁があり、

さらに、

「突然強い尿意が起こるとトイレまで間に合わない」

という切迫性尿失禁もある。

こうした状態です。

人によっては腹圧性尿失禁の症状の方が強いこともありますし、切迫性尿失禁の方が困っている場合もあります。

そのため治療を考える際には、

「どちらの症状が生活上より困っているのか?」

を確認することも大切です[5]。


機能性(きのうせい)尿失禁

機能性尿失禁は、これまで説明した尿失禁とは少し性質が違います。

一言でいうと、

「トイレに行きたいことは分かっている。でもトイレまで間に合わない」

というタイプの尿失禁です[2]。

たとえば、

膝の変形性関節症があり、歩くのに非常に時間がかかる高齢者を考えてみましょう。

尿意を感じて、

「トイレに行こう」

と思います。

しかし、

立ち上がる。

歩行器を準備する。

ゆっくりトイレまで歩く。

ズボンや下着を下ろす。

ここまでに時間がかかります。

そして、

トイレに到着する前に漏れてしまう。

もし普通に歩くことができれば漏れずに排尿できる。

このような状態が機能性尿失禁です。


高齢者では特に重要です

機能性尿失禁の原因は、歩行能力の低下だけではありません。

たとえば、

  • 脳卒中後の麻痺
  • 腰痛
  • 膝や股関節の障害
  • 認知機能の低下
  • トイレの場所が分からない
  • 衣服を脱ぐのに時間がかかる
  • ベッドからトイレまでが遠い

など、さまざまな要因があります[2]。

そのため、

「尿が漏れる=膀胱の薬を飲めばいい」

とは限りません。

ベッドからトイレまでの動線を短くしたり、ポータブルトイレを利用したり、定期的にトイレへ誘導したりすることで改善できる場合もあります。

高齢者医療や在宅医療では、特に大切な視点です。


溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

最後に、

溢流性尿失禁

について説明します。

これは少し分かりにくいので、膀胱を「尿をためるタンク」だと思って考えてみましょう。

何らかの原因によって、

膀胱にたまった尿を十分に外へ出せなくなった

とします。

排尿はしているものの、膀胱の中に尿が残っています。

これを、

残尿(ざんにょう)

といいます。

さらに排尿障害が進むと、膀胱の中にたくさんの尿が残るようになります。

それでも腎臓では新しい尿が作られ続けます。

すると膀胱に尿がたくさんたまった状態となり、

少量ずつダラダラと尿が漏れる

ことがあります。

これが溢流性尿失禁です[2,6]。


「尿が漏れている=尿がよく出ている」ではありません

溢流性尿失禁で特に注意してほしいのが、ここです。

尿が漏れているので、

「尿はちゃんと出ている」

と思ってしまうかもしれません。

ところが実際には、

膀胱の中に大量の尿が残っている

ことがあります。

つまり、

尿が漏れているからといって、膀胱が空になっているとは限らない

のです。

溢流性尿失禁は、

尿をためることよりも、「尿を十分に出せないこと」が問題

になっている尿失禁です。


溢流性尿失禁の原因は?

代表的な原因のひとつが、

前立腺肥大症

です。

前立腺が大きくなり尿道が圧迫されると、

  • 尿の勢いが弱い
  • 排尿に時間がかかる
  • 尿が途切れる
  • お腹に力を入れないと出ない
  • 排尿後も尿が残っている感じがする

などの症状が起こります。

さらに排尿障害が進むと残尿量が多くなり、溢流性尿失禁につながることがあります[2]。

また男性だけの問題ではありません。

糖尿病による神経障害、脊髄疾患、腰椎疾患、骨盤内手術による神経障害などで膀胱が十分に収縮できなくなり、尿を出し切れなくなることもあります。


大量の残尿を放置するとどうなる?

残尿が大量にある状態が続くと、

  • 尿路感染症
  • 膀胱機能の低下
  • 尿閉
  • 上部尿路への影響
  • 腎機能障害

などにつながる可能性があります[6]。

そのため、

「少しずつ尿が漏れているから、とりあえず尿は出ているので大丈夫」

とは考えない方がよいでしょう。

特に、

「最近、尿の勢いがものすごく弱くなった」

「排尿にとても時間がかかる」

「少ししか出ないのに何度もトイレに行く」

「お腹の下の方が張っている」

「尿がダラダラ漏れる」

といった症状がある場合には、泌尿器科で一度残尿量を測定してもらうことをおすすめします。


尿もれのタイプによって治療法は違います

ここまで見てきたように、一言で「尿もれ」といっても、その原因は同じではありません。

たとえば、

腹圧性尿失禁では、骨盤底筋訓練などが治療の中心になることがあります。

切迫性尿失禁では、生活指導や膀胱訓練、薬物療法などが検討されます[2,3]。

一方、

溢流性尿失禁では、単純に「尿を漏れにくくする」という考え方ではいけません。

まず、

なぜ尿を十分に出せなくなっているのか?

を調べる必要があります。

そのため尿失禁の診療では、

  • どんなときに漏れるのか
  • どのくらい漏れるのか
  • 1日に何回排尿しているのか
  • 尿の勢いはどうか
  • 残尿感はあるのか
  • どんな薬を飲んでいるのか

などを確認します。

必要に応じて、

尿検査、排尿日誌、超音波検査による残尿測定

などを行います[2,5]。


こんな尿もれは一度泌尿器科へ

尿もれは珍しい症状ではありません。

しかし、

「年齢だから仕方がない」

「出産したから仕方がない」

とすべて我慢する必要はありません。

特に、

  • 尿もれが生活に支障をきたしている
  • 尿もれが徐々に悪化している
  • 尿の勢いが極端に弱い
  • 排尿に非常に時間がかかる
  • 血尿がある
  • 排尿すると痛い
  • 発熱を伴う
  • 膀胱が張っている感じがする

といった症状がある場合には、一度医療機関へ相談してください。

そして、

尿がしたい、あるいは下腹部が張って苦しいのに、まったく尿が出ない

という場合は、

尿閉(にょうへい)

の可能性があります。

尿閉では、尿道からカテーテルを入れるなどして膀胱内の尿を排出する処置が必要になることがあります。

このような場合は放置せず、速やかに医療機関を受診してください。


まとめ

今回は、

「尿もれ(尿失禁)にはどんな種類があるのか?」

についてお話ししました。

もう一度まとめてみましょう。

咳やくしゃみ、運動で漏れる

→ 腹圧性尿失禁

突然ものすごくおしっこがしたくなり、トイレまで間に合わない

→ 切迫性尿失禁

腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方がある

→ 混合性尿失禁

尿意は分かるものの、歩行障害などでトイレまで間に合わない

→ 機能性尿失禁

尿を十分に出せず、膀胱に尿がたくさん残った状態で少しずつ漏れる

→ 溢流性尿失禁

ということになります。

尿もれは恥ずかしさもあって、なかなか人には相談しにくい症状かもしれません。

しかし泌尿器科では、

尿もれは日常的に診察している症状のひとつです。

そして尿失禁にはいくつかのタイプがあり、タイプが違えば治療法も変わります。

まず大切なのは、

「いつ、どんな状況で尿が漏れるのか?」

を確認することです。

尿もれで困っている方は、恥ずかしがらずに一度泌尿器科で相談してみてください。

今回は尿失禁の「種類」についてお話ししました。

次回は、

「尿もれはどうやって治療するの?」

というところを、もう少し詳しくお話ししたいと思います。

それではまた!


参考文献・ガイドライン

[1] Abrams P, Cardozo L, Fall M, et al. The standardisation of terminology of lower urinary tract function: report from the Standardisation Sub-committee of the International Continence Society. Neurourology and Urodynamics. 2002;21(2):167-178. doi:10.1002/nau.10052.

[2] 日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会 編.女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版].リッチヒルメディカル,2019.(2023年11月訂正版、2025年3月アップデート内容を含む)

[3] 日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会 編.過活動膀胱診療ガイドライン[第3版].リッチヒルメディカル,2022.

[4] International Continence Society. Stress Urinary Incontinence. ICS Fact Sheet.

[5] International Consultation on Incontinence. Incontinence, 7th Edition. International Continence Society / International Consultation on Urological Diseases, 2024.

[6] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK). Definition & Facts of Urinary Retention. National Institutes of Health.

[7] 日本泌尿器科学会.一般のみなさま向け「尿が漏れる・尿失禁がある」.


医療情報について

本記事は、尿もれ・尿失禁について一般の方に理解していただくことを目的として、医学的知見や診療ガイドラインをもとに作成した情報提供記事です。

特定の患者さんの診断や治療を目的とするものではありません。

症状や治療法は、年齢、性別、基礎疾患、服用している薬などによって異なります。尿もれが続く場合、生活に支障をきたしている場合、血尿・発熱・強い排尿困難などを伴う場合には、泌尿器科などの医療機関へご相談ください。

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